産婦人科専門医。東京女子医科大学卒業。東京女子医科大学病院で初期研修した後、東京女子医科大学産婦人科教室に入局し、現在は「サンタクルス ザ シュクガワ」にて産婦人科診療を行う。
生理の悩み
更年期を迎える前の、30代のうちに閉経を迎えてしまう、「早期閉経(早発閉経)」なる症状にかかる若い女性もいるようです。そんな早期閉経の症状や原因、そして対処法について解説していきましょう。
この記事では、レディース&マタニティクリニック ザ 夙川 の 産婦人科医 高田優子 先生の監修のもと 女性の気になる早期閉経(早発閉経)の原因や症状についてまとめてみました。
閉経――それは、女性ならいつかは必ず迎えること。「そうね、だから最近やたらと汗をかいたり、イライラしたり、生理も不順だったり…って、私まだ32歳なんですけど!」というあなた、もしかしたら、それは、早期閉経かもしれません。
閉経を迎える時期には個人差があるとはいえ、それは早くて40代後半です。日本産科婦人科学会による、日本女性の平均閉経年齢は50歳。30代で更年期のような症状が現れるのは、いくらなんでも早すぎます。
更年期的症状が現れる上、生理不順が続いているという場合は、早期閉経を疑ってみてもよいかもしれません。
早期閉経とは簡単に言うと、なんらかの原因により、40歳未満で生理がこなくなることです。早発卵巣不全(POF)とも呼ばれます。
早期閉経と生理がこない状態=無月経との違いは、卵子が残っているかどうかです。一時的な無月経の状態であれば、時間はかかるかもしれませんが、適切な治療を行えばまた生理がくるようになり、排卵が再開する可能性はあります。
しかし、閉経はそもそも排卵できる卵子がない状態です。なんらかの原因で卵子が消失してしまっているため、若くして閉経が訪れてしまうこと、それが早期閉経なのです。
なぜ早くに閉経が訪れてしまうのか、その原因が気になるところですが、実は現代の医学を持ってしても、早期閉経のはっきりとした原因は、ほとんどわかっていないのです。
遺伝や免疫に問題があったり、過去に卵巣の手術や化学療法・放射線治療を受けたりしたことで発症する場合がありますが、そのように原因がわかっているのは、早期閉経患者全体の10~20%程度。残りのほとんどが原因不明なのです。
早期閉経の一般的な治療法は、ホルモン補充療法です。妊娠を希望する場合は、エストロゲンと黄体ホルモンを、妊娠を希望しない場合は、更年期障害に行うのと同様のホルモン補充を行います。ただし、あくまで症状改善のための治療であり、根本的な卵巣機能の回復をすることはできません。
これから妊娠、出産を考えていた矢先、訪れた婦人科で「早期閉経」と診断されてしまう場合もあります。そうなると、気になるのは「早期閉経でも妊娠できるのか?」ということ。これに関しては、「決してできないわけではないが、治療は非常に困難」というのが、現状のようです。
早期閉経と診断されても、原因によっては、ホルモン療法を続けていれば排卵が再びおこることがないわけではありません。しかし、先ほどもお話ししたように、早期閉経は「卵子が消失した」状態のため、卵子提供を受けて体外受精で妊娠する、というのが一般的です。
ただし、2013年に聖マリアンナ医科大の研究チームが、早期閉経の女性から卵巣を取り出し、休眠状態だった卵子を体外で培養して再び戻すという、新たな治療方法に成功したとの発表もあり、早期閉経の女性の妊娠については、希望が広がる可能性も大いにあるといえます。
早期閉経は予防できるのでしょうか?これについては、発症の原因が定かではないので、予防は難しいというのが、正直なところだと考えられます。「生理がこないといった異常を感じたら、なるべく早めに病院を受診する」、これが最大の予防といえるかもしれません。
とはいえ、早期閉経は「増えている」といっても、ごくまれな病気です。40歳未満の女性のうち、早期閉経と診断されるのは、1%程度といわれています。
「現代女性は更年期が早まっている」「30代でプチ更年期になる女性が増えている」などといわれることもありますし、今回のコラムでも最初はちょっと大げさに話しましたが、それらにあおられて、早期閉経を必要以上に怖がる必要はありません。
正しい知識を得て、自分の体と正直に向き合うこと、これが何よりも大切なことです。女性の皆さん、ご自身の体をかわいがって、素敵な人生を送ってください!
産婦人科専門医。東京女子医科大学卒業。東京女子医科大学病院で初期研修した後、東京女子医科大学産婦人科教室に入局し、現在は「サンタクルス ザ シュクガワ」にて産婦人科診療を行う。
※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません