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皆さんは「ピルを飲むと妊娠しない」「ピルはコンドームよりも妊娠確率が低い」という話を聞いたことはありますか?
コンドームによる避妊率は、セックスの最中に外れる・付け方を間違えるといったリスクを加味すると約82%といわれています。対してピルの避妊率は99.7%。非常に高い避妊効果が期待できるため、いわゆる「中出し」といわれる膣内射精をされても「ピルを飲んでいれば妊娠しない」という認識が浸透しているようです。
たしかに、正しい用法でピルを飲めば高確率で妊娠を防ぐことは可能です。しかし避妊率が100%でない以上、妊娠のリスクは常についてまわります。ピルを飲んでいても中出しで妊娠に失敗することもありますし、ピルでは防ぎきれないセックスのリスクも存在します。
今回は、産婦人科医の一倉絵莉子先生の監修のもと、一般的に使われる低用量ピルの効果や注意点を解説します。正しいピルの知識をつけて、使用するかどうかを判断しましょう。
単純に「ピル」というと英語では錠剤を意味することが多いです。しかし日本では一般的に『経口避妊薬(oral contraceptive)』の意味として使われることが多いです。経口とは口から服用することで、低用量ピルは飲み薬です。
男性の協力なしでできる画期的な避妊方法のひとつで、世界で1億人以上の女性が飲んでいると言われています。
低用量ピルの成分は「黄体ホルモン(プロゲステロン)」と「卵胞ホルモン(エストロゲン)」という2種類の女性ホルモンです。
低用量ピルは1度飲めば良いというものではなく、飲んでいる生理周期中のみ効果を発揮します。そのため、「いつか妊娠はしたいけれど、今は避妊していたい」という方でも、飲むのを辞め排卵するようになれば妊娠することも可能です。
また、性行為後に飲むのではなく、生理周期に合わせて1日1錠、決まった時間に飲む必要があります(休薬期間があるピルもあります)。この時飲み忘れがあると、妊娠する可能性が高まってしまいます。
性行為後に緊急避妊として服用するのは「モーニングアフターピル」と呼ばれるもので、通常の低用量ピルとは異なります。モーニングアフターピルは高価かつ体への負担が大きいため服用には注意が必要です。
ピルを飲むと、女性の身体は「妊娠しない状態」になります。妊娠は女性の卵子が卵巣から排卵されて、精子と受精することで起こります。ピルを飲むことで排卵が起きなくなるので、「生でセックス」をしても妊娠は成立しません。
ピルによって外からホルモンを摂取することで、排卵したのと同じ状態になります。それにより、卵子が成熟して排卵されるというプロセスが起きなくなるのです。
前述のとおり低用量ピルの主成分は「黄体ホルモン(プロゲステロン)」と「卵胞ホルモン(エストロゲン)」という2種類の女性ホルモンです。これらの女性ホルモンは通常卵巣でつくられるものですが、ピルを服用し体外から女性ホルモンを取り入れることで「すでに必要な女性ホルモンが分泌されている」と脳に判断させます。
それによって、卵巣内でのホルモン分泌が抑制され、排卵が止まることで妊娠を防げるという仕組みです。
ピル(経口避妊薬)は、飲み忘れなく正しく服用すれば、99.7%もの避妊効果があります。これはコンドームの避妊効果以上です。コンドームの避妊率は正しく使えば98%以上と高いのですが、付ける方法を間違えたり、外れるなどのトラブルが起きることもあります。その場合、コンドームの避妊確率は85%以下まで下がります。
つまりこの数値からもわかるように、低用量ピルの避妊効果がコンドームよりも高いというのは本当だと言えます。妊娠を望まない状況で、コンドームが破れるなどのトラブルがあっても慌てずに済むように、普段から低用量ピルを飲んでいるという人もいます。
ピルには種類があります。成分の配合量により、高用量、中用量、低用量に分けられています。成分の配合量が多い「高用量」「中用量」は副作用が強くなるといった影響があります。そのため、現在流通しているもののほとんどが「低用量ピル」です。「低用量」だから避妊効果が低い、というわけではありません。
最初に誕生したのは「高用量ピル」と呼ばれるピルです。高用量ピルは含まれている女性ホルモンの量が多く、胃腸障害、静脈血栓塞栓症といった深刻な副作用が問題視され使われなくなりました。
「中用量ピル」は高用量ピルよりも女性ホルモンの量が少ない分、副作用が軽減されました。中用量ピルはアフターピルや月経周期をずらす目的で使われることが多く、性行為後72時間以内に中用量ピルを服用すれば80%以上の確率で避妊できるとされています。
しかし中用量ピルは低用量ピルに比べると頭痛や吐き気、血栓症といった副作用が強く出る可能性があるため、安全面を考慮して現在は低用量ピルの使用が一般的になっています。現在婦人科で「ピルをください」と言って処方されるのも、低用量ピルです。
低用量ピルは薬局やドラッグストアでは販売しておらず、病院で処方されています。低用量ピルには血栓症をはじめさまざまな副作用がありますが、万が一副作用が出た場合に病院ならば適切な処置を受けることができるからです。
1ヶ月に1回病院に行ってピルを受け取るわけでなく、病院によっては数ヶ月分(長ければ半年分ほど)まとめて処方してもらえます。また、最近ではオンラインで最短翌日に処方してもらう仕組みもできています。
マイピルというオンライン診療サービスであれば、必ず産婦人科の医師が診療と処方を担当をするのでご安心ください。
「忙しくて病院に行けない・・・」と諦める前に、自分の体のことを第一に考えましょう!
※低用量ピルの内服により子宮頸癌や乳癌のリスクを高める可能性があるので、1年に1回は子宮頸癌検査や乳癌検査を受診するようにしましょう。また、経膣超音波や採血検査も医師と相談の上で定期的に行いましょう。
アフターピルは万一、アクシデントなどで避妊を失敗した時の為の緊急用ピルで、低用量ピルとは全く別の種類のものです。アフターピルはセックス後72時間以内に服用し、その12時間後に2回目の服用をします。(内服が1回のみの緊急避妊薬もあります)アフターピルも医師による処方が必要となります。
「緊急避妊ピル(事後ピル)」とも呼ばれるこの方法は、ホルモンの作用で子宮内膜をはがして「受精卵」の「着床」を阻止する方法です。
緊急避妊薬の効果としては24時間以内で約95%、25~48時間で約85%の妊娠が防げるといわれています。
もちろん1度に大量の女性ホルモンを取り入れるため、体への負担や経済的な負担も大きいというリスクもあり、アフターピル(緊急避妊のためのピル)の使用は「最終手段」として以外におすすめはできません。
低用量ピルは使い方を間違えると効果を発揮しません。間違った使い方をすると、望まない妊娠をしてしまうリスクがあります。低用量ピルの飲み方は複雑なので、しっかり知っておきましょう。
指定された日から1日1錠飲みつづけてください。ピルは毎日ほぼ一定の時間に飲むことが大切です。普通の薬のように「食前・食中・食後」のようなことはありません。
決まった時間に飲むために、習慣を身につけましょう。朝食後、朝の歯磨き後、昼食後、就寝前など、日常生活の何かの行動と関連づけ習慣になるようにすると忘れにくくなります。また、スマートフォンで毎日アラームを設定したり、お薬の「飲み忘れ防止アプリ」を活用するという方法もあります。
ピル(低用量ピル)は、しっかり飲むことで99.9%という高い避妊率になります。1日1回1錠を飲み続ければ、セックスで中出しをしたとしても妊娠することはありません。しかし、注意しなければならないのは、ピルは1日でも飲み忘れると排卵してしまうことがあり避妊効果がなくなること。
ピルの効き目は24時間だけで、万が一、飲み忘れてしまったら、飲まなければならなかった時間から12時間経っていない場合は、すぐに飲み忘れたピルを服用し、次の日も通常通り服用してください。もし12時間を過ぎた場合は、飲み忘れたピルを服用したうえで、念のためにほかの避妊法を併用する方がいいでしょう。
そして、ピルを飲むのを2日以上忘れてしまったら、その時点でピルを飲むのをやめて、生理になったら再スタートしてください。服用のない期間は、妊娠を望まないのであれば中出しをせずに、コンドームなどで避妊してください。コンドームは約90%の避妊効果があると言われていますが、破れたり、外れたりするリスクがあるので注意してください。
前述のように、ピルにはコンドームをせずにセックスをしても妊娠を防ぐ効果が期待できます。しかしピルには効果が出る条件や、服用の際の注意点があります。低用量ピルの注意点を見ていきましょう。
「ピルを飲み始めてから、いつから中出しができるのか?」ですが、生理周期に合わせて飲み始めて1週間くらいで避妊効果が出始めます。そのため、妊娠を望まないのであれば基本的には7日間はセックスでの中出しを避けてください。
また、ピルを始めるのに適しているのは月経開始~5日目までです。生理が終わって数日後にピルを飲み始めてもその直後の排卵日の排卵を抑制することができない可能性が高いです。
つまり、月経中5日目までに服用を開始した場合、追加の避妊法は必要ないとされていますが、それ以降に開始した場合はコンドームなど追加の避妊法を用いるようにしてください。
仕事やプライベートで忙しかったりすると、同じ時間に毎日薬を飲むのが難しく、飲み忘れてしまう人もいます。こうすると避妊効果は十分に得られませんので、コンドーム等の避妊方法を取り入れることが必要です。
2日以上忘れてしまうとほとんど避妊効果は得られないので、せっかく薬を処方してもらったのにと残念に思う人もいるでしょう。飲み忘れたこと自体に気づきやすいように薬のパッケージはとても工夫されていますので、しっかり飲み忘れていないか確認しながら服用していきましょう。
ピルは飲み始めのとき、ホルモンバランスが妊娠初期に似ているため、吐き気やつわりと似た症状が出る人もいます。しかし、たいていの場合、ピルを飲み続けていくうちにおさまってきます。
また、ピルの主な副作用として血栓症があります。血栓症とは、血管の中にできた血の塊(栓)が血液の流れをせき止め、臓器が正しく機能しなくなり臓器障害を引き起こす病気です。喫煙者や肥満、年齢が40歳以上には特にリスクが高まります。血栓症は放置すると命に関わるため、低用量ピルをのむ際の副作用として注意が呼びかけられています。
ほかにも副作用として不正出血があります。不正出血もピルを飲み続けるうちにおさまってきますが、出血がなかなか止まらない場合は病院に相談しましょう。
ただし現在処方されている低用量ピルの場合、副作用を過度に心配する必要はありませんが重大な副作用を見逃さない為にも、ピルは医師が病院で処方しています内服するかどうかは、医師よりリスクの説明を充分に受け、理解したうえで内服するようにしましょう。
また医師に指示された必要な検査(子宮頸癌検査、乳癌検査、経膣超音波、採血など)は必ず受けるようにしましょう。
ピルを飲んで妊娠する恐れがなければ、生でセックスしても安全かというとそうではありません。セックスのリスクの一つには「性感染症」もありますが、これはピルで防ぐことはできないのです。
性感染症とは、セックスやオーラルセックスなどの性行為によって感染する病気のことです。精液や性器に含まれた病原菌、ウイルスが相手の体内に入ることでうつることが多いです。
性感染症の種類には、クラミジア、淋病、性器ヘルペス、梅毒などが挙げられます。中にはかゆみや痛みといった自覚症状の出にくいものもあり、異変を感じて病院を受診した時にはかなり進行してしまっているということもあります。
こういった性感染症はコンドームによって大部分が防ぐことができます。そのため「ピルを飲んでいて妊娠しないから中出ししても大丈夫」と判断してコンドームを付けないことはとても危険な事なのです。
性感染症については下記のコラムにもそれぞれ詳しく説明しているので、是非参考にしてみてください。
避妊用ピルには他の効果として月経困難症の改善や生理の周期をずらしたい時、生理不順を改善したい時など様々な場面で活躍しています。
避妊もしたくて生理にも不調を抱えている人は、思い切ってピルを選択すると様々なメリットが得られる可能性があります。
生理とは子宮内膜が肥厚しやがて剥がれ落ちる時に起こります。子宮内膜が分厚くなるほど、生理の時に排出される量も多くなり排出しきるのに時間がかかります。つまり生理期間が長くなることが多いのです。
一方で、低用量ピルにはこの子宮内膜が厚くなるのを防ぐという作用もあります。そうなると、排出される量が少なくなり(全く出血がない人もいます)短い期間で終わるようになります。そのため生理が軽くなったと感じる人が多いようです。
低用量ピルの治療に適している人として、以下が挙げられます。
こんな人に!低用量ピルの服用が向いている人
生理痛(腹痛)がとても強い
子宮内膜症の人
月経時の経血量がとても多い
PMSがひどい
月経が不順気味
肌荒れやニキビがひどい
低用量ピルは、前述したように女性ホルモンをコントロールする効果があるため、女性ホルモンが原因のさまざまな症状の治療薬としても使われています。
低用量ピルには生理痛を起こす発痛物質「プロスタグランジン」の分泌を抑制し、子宮内膜を薄く保って月経量を減らす働きがあるため、生理痛がひどい人や経血量が多い人、子宮内膜症の人の治療に適しています。
またピルには排卵を止める作用があるので、排卵による黄体ホルモン(プロゲステロン)が原因のPMSの治療にも使われています。月経困難症については下記の記事でも紹介しているので、是非参考にしてみてください。
ピルを飲んでいる間は、生理が来ない状態になります。反対にピルを飲むのを辞めると、数日後に生理が来ます。
そのため、生理周期を遅らせたい人は生理予定日の5日ほど前から低用量ピルを飲みつづけることで生理が来るのを防ぐことができます。ずらしたい予定日が過ぎたら飲むのをストップします。そうすると2~3日で生理が来ます。ただし、ずっと飲み続けるのは子宮内膜がたまり続けてしまうので、最大でも10日程度遅らせることが限度です。
反対に早くしたい人は生理の3~5日目からピルを飲み始めましょう。飲み終わってから2~3日後に生理(消退出血)が起こります。早く来ている分子宮内膜の蓄積も少ないので、通常の生理よりも出血が少ないことが多いです。
このように低用量ピルを使用して生理を早めたり遅めたりすることで、スポーツの試合や旅行などの予定と合わないようにすることなどができます。調節したい生理があれば、早めに医師に相談しましょう。生理の始まるぎりぎりに受診しても、うまく調節できないことがあります。
ピルとコンドームにはそれぞれ便利な所と、安心出来ないポイントがあります。安易に「中出ししても大丈夫」と考えるのは早計です。
それぞれのデメリットをまとめると、次の通りになります。
【ピル】
飲み忘れがあると効果が発揮できない
STDが防げない
【コンドーム】
摩擦で破れてしまう可能性がある
男性の協力が必要
このように、どちらかだけでは避妊は100パーセント安心だとは言い切れません。そこで「セックスはしたいけれど、妊娠は望んでいない」という場合、最も確実な方法の一つとして普段からコンドームとピルの両方を使う避妊方法がおススメです。
これならば、どちらかが失敗し、不測の事態が起きても高い避妊率を維持することが出来ますし、「なにかあっても大丈夫」という安心感があれば、彼とのラブタイムをもっと開放的に楽しめそうだと思いませんか?
避妊は何も恥ずかしいことではありません。きちんと彼と話し合って、2人とって最も良い方法を模索していきましょう!
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日本産科婦人科学会専門医、一般社団法人日本女性医学学会会員。日本大学医学部卒業。川口市立医療センター、北里大学メディカルセンター産婦人科等に勤務。現在は六本木ヒルズクリニックにて診療を行っている。
※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません