日本産科婦人科学会専門医、一般社団法人日本女性医学学会会員。日本大学医学部卒業。川口市立医療センター、北里大学メディカルセンター産婦人科等に勤務。現在は六本木ヒルズクリニックにて診療を行っている。
この記事では、六本木ヒルズクリニックの 産婦人科医 一倉絵莉子 先生の監修のもと 女性の気になる淋病の原因や症状についてまとめてみました。
淋病は淋菌を病原菌とする性感染症です。
淋は「さびしい」という意味ではなく、葉っぱからポタポタと雨がしたたり落ちるイメージを表しています。淋菌が尿道に入り込むと尿道が狭まり、おしっこがポタポタとしか出なくなることから病名がつけられました。
淋菌は尿道や子宮頚管の粘膜を好み、粘膜から離れると数時間で感染性がなくなり、日光や乾燥、温度の変化や消毒剤によって簡単に死滅します。ですので、性行為やオーラルセックス以外で感染することはほとんどありません。
淋病の感染者は男女ともに、10~20 歳代の若い世代に多く、年々増加傾向なのが特徴です。 他の年代においても増加傾向にありますので注意が必要です。
男性では尿道炎、女性では子宮頸管炎が最も多くの人にみられます。
重症になってしまうと菌がより体内の奥へ入り込んでしまい、男性では精巣上体炎、女性では淋菌性骨盤内感染症になってしまいます。
さらに、淋菌が血液の流れに乗って全身に運ばれてしまうと、関節や肝臓を覆う膜、心臓の内側の膜にまで影響を与えてしまいかねません。
また、分娩時の産道感染も感染経路の1つであることは覚えておきましょう。
新生児が出産の際に母体から感染すると(胎児への感染率は約30~50%です)、まず両目が新生児膿漏眼となり最悪の場合失明の危険があります。妊娠中の感染では前期破水や流早産、子宮内胎児死亡や胎児発育不全を認めることもあります。
淋病には2日~7日間の潜伏期間があり、潜伏期間後に症状が出てきます。男性と女性では症状が異なりますのでそれぞれみていきましょう。
男性の場合は、潜伏期間後におしっこの後のしみるような強い痛み、尿道から黄色~白色のうみが出る、尿道の辺りが赤く腫れることがあります。
まれに男性の感染者で症状が出ない人もいますが、そのような人も病気は進行していきますので注意が必要です。
菌がより体内の奥へ入り込んでしまいますと、高熱が出たりおしっこができなくなったりし、ひどくなると精巣上体炎となり男性不妊になってしまうこともあります。
女性の場合、感染者の約80%に症状が出ません。
約20%の女性においてが、おしっこをした際のしみるような痛み、不正出血、下腹部の痛み、うみのようなおりものといった症状が出ます。
おしっこの出始めに痛みがあるのが特徴的です。
バルトリン腺という、膣口の少し下辺りの部分が感染して赤く腫れてしまう場合もあります。
女性でもやはり、症状がないからと放置しておくと病気は進行し、卵管炎や卵巣炎、骨盤腹膜炎や肝臓周囲炎になり女性不妊の原因となってしまいます。
男性は男性器からうみが出るなどの症状がわかりやすいですが、女性は男性に比べ症状が軽いため気がつかない場合も多いです。
感染しているのに症状に気がつかないと、知らない間に性交渉を通して異性にうつしてしまうことになります。
それでは1番気になる淋病はなにで感染するかをみていきましょう。
淋病の主な感染経路は性行為です。
1回の性行為での感染率は約30%と高くなっており、性器クラミジア感染症とならんでよくある性感染症として知られています。またクラミジア感染者の20%前後に淋菌の重複感染を認めています。
淋病の感染者は男女ともに、10~20 歳代の若い世代に多く、年々増加傾向なのが特徴です。他の年代においても増加傾向にありますので注意が必要です。
キスやオーラルセックスも淋病の感染経路です。
最近はオーラルセックスの増加によって、女性の喉に菌がくっついてしまう場合が問題となっています。性器淋菌感染症患者の10~30%に咽頭からも淋菌が検出されています。特に性風俗に従事する人に多く、最大の感染源であるとされています。
淋菌がついた手で目や鼻をこすると、鼻涙管や下鼻道を通って喉に感染することも。喉に感染した場合にも症状が出ないことが多いため発見が遅くなりがちです。
淋病を疑ったら婦人科で検査と必要に応じて治療を受けましょう。
淋病は自然に治ることはありませんが、適切な治療を受ければ治すことが可能です。前述したようにクラミジアとの重複感染することがありますのでクラミジア検査も必ず同時に行いましょう。
まず病院に行くと淋菌に感染しているかを調べるための検査を受けます。
検査は、スワブと呼ばれる綿棒のようなもので性器や喉の粘膜をぬぐって、PCR法で診断していきます。
PCR法とは、細菌の遺伝子の一部分をコピーして増やす検査方法で、検査の感度が非常に高いのが特徴です。
病院に行かずに郵送で検査ができる施設もありますが、先に触れたとおり淋菌は粘膜から離れると簡単に死滅する細菌ですので、手順に不備があると正確に検査ができません。
手順の不備とは、スワブに経血や不純物が付着したり、時間をかけすぎて乾燥や日光の影響を受けたりした場合です。そのため正確な診断と治療のためになるべく医師による検査を行いましょう。
男性の場合は尿検査で診断することもあります。
診断の結果、「陽性(淋菌に感染している状態)」となってしまうと治療が必要となります。治療にはセフトリアキソンという抗生剤を点滴投与するのが第一選択です。
他にもペニシリン系抗生剤、セフォジジム、スペクチノマイシンなど、症状によって治療法は変わってきます。
点滴ではなく飲み薬での治療も可能です。飲み薬の場合は、7~10日間続けて薬を飲み続けます。
薬を飲んでいる途中で症状が良くなったとしても、処方された分の薬をしっかり飲みきることが大切です。一見、症状が消えたように思えても淋菌が体の中に残っている場合があり、症状が再び現れたり、他の人に移してしまったりする恐れがあります。
治療が終わったら、2週間ほど時間を空けて再び検査し、「陰性(淋菌に感染していない状態)」が確認できれば治療が完了します。
淋病の治療がうまくいったら再発予防もしていきましょう。予防策としてはコンドームの使用が必須であり、不特定多数の相手との性交渉を行わないことも大切です。
ただし、コンドームで100%性感染症を防ぐことはできません。
コンドームには破れたり外れたりするリスクがあることも頭に入れておきましょう。
喉への感染はディープキスやオーラルセックスがきっかけとなりますので、コンドームを使用しても防ぐことは困難です。
また、パートナーがいる場合は、再発予防のためにはパートナーを含めての治療が必要となります。 1人が淋菌感染を完治させたとしても、パートナーが淋菌を持ったままだと性行為を通して再び感染してしまいかねません。このように、パートナーと菌を感染し合うことを「ピンポン感染」と呼び、ピンポン感染をなくすためにパートナーを含めた治療が必要となるのです。
性感染症のことをパートナーに相談するのは勇気のいることかもしれません。しかし、淋菌を完治させお互いの健康、そして妊娠を望む場合は子どもの健康を守るためには必要なことです。
日本産科婦人科学会専門医、一般社団法人日本女性医学学会会員。日本大学医学部卒業。川口市立医療センター、北里大学メディカルセンター産婦人科等に勤務。現在は六本木ヒルズクリニックにて診療を行っている。
※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません